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「ははは、ルイズ、君の使い魔は恐ろしく強いね。スクウェアの僕ですら歯が立たなかったよ」 「…だから止めようとしたのに」 気絶し、数本骨折したワルドはすぐにルイズが呼びつけた水のメイジに治療され、事なき事を得た。 「ワムウも、任務中に味方を怪我させるなんて…あとでキツくいっておかないと」 「いやいや、僕が吹っかけた喧嘩なんだ。返り討ちにあった僕の自業自得さ」 ワルドはなんの恨みもないのか、爽やかに笑いかける。 「まだ出発まで一晩ある。これくらいの傷、全く影響しないさ」 その笑みの隙間からは白い歯が覗けた。 * * * 「仮面の男、で呼べばよかったわよね?」 「ああ、その通りだ。こんな重要なことを忘れるとはもう年かね?」 フーケは笑みを崩す。 「…わたしの、年が…なんだって?」 「認めたくないものだな!自分自身の、老い故の過ちというものを!」 「この私が『行き遅れ』みてぇーだとぉ!?」 フーケがガタンと立ち上がる。 「確かに聞いたぞこらあああッ!!」 「見せて貰おうか!土くれのフーケの性能とやらを!」 仮面の男も杖を抜く。 結局、数秒後にフーケが折れる。 「どうしたんだい、イラついて、あんたらしくないよ?」 「別になんでもないぞ行き遅れ」 ビキッ、とフーケの眉がつり上がるが、なんとか笑みを崩さない。 「わかったわ、なにも聞かないからぶん殴られる前にとっとと用件話しな」 「あの相棒、とは会ったな、どういった作戦を立てたんだ?」 「使い魔だけかと思ったらおまけまでついて来たって言うんでね、各個撃破することにしたわ。 二束三文で雇った傭兵どもで正面を襲う。そこであんたたちに裏口から逃げてもらう。 そうして残った奴らが前に集中している間に、予想外のところから仕掛ける。あいつの攻撃を 最初に食らった奴を始末する間に私が時間を稼いで、始末し終えたらあいつがそのまま強行突破。 残りの数人を戦闘不能にしている間にルイズとワルドが裏口から逃げてく寸法さ。あんた達の脱出は任せたからね」 ふむ、とワルドが頷く。 「なるほど、奴の能力なら妥当だろう。遠距離戦は向いてないが、背後から急襲をかければ俺くらいでなければ どうにもならん。脱出に関しては任せてくれたまえ、筋肉バカとガキどもくらい簡単に説得できる… ところで、最初に仕掛ける相手は誰なんだ?」 フーケは首を傾げる。 「さーね、そのとき一番近くにいる奴じゃないか?一々そこまで決めてないよ」 ワルドは身を乗り出す。 「ならば…先にあの使い魔をやれ、肉片すら残すなよ」 「…なにがあったかしらないけれど、あいつは頼まれなくても残すことはないさ」 * * * 出かけていったワルドを待つ酒場で待つ一行。 案の定二日酔いのギーシュは飲ませてもらえない。 「酒!飲まずにいられないんだあッ」 「アルビオンまで酒は送迎してくれないわよ」 ドアが開く。 ワルドが入ってくる。 「皆、いいニュースだ」 その言葉にワムウ以外の注目が集まる。 「足りない馬力を僕の魔法で補うということで、交渉が成立した。もっとも、貨物船だが贅沢は言っていられない。 皆、出発の支度をしろ!」 ワルドが声を張り上げた途端、銃声が轟いた。 「ヒャッハッハッ酒だ!女だ!」 「ヒャッハー!ここは通さねえぜ!」 「面倒だ、全員やっちまうぜ!」 貴族の宿「女神の杵柄」の客とは思えない風貌の連中が武器を入り口周辺で振り回している。 蜘蛛の子を散らすように客が逃げていくが、一行は逃げるに逃げられない。 腕はあまりよくないが、一応彼らの近くを銃弾が飛び交っていたからだ。 同じく、奥にいた店長も体を伏せ、震えている。 数人のモヒカンが武器をもってこちらへ向かってくる。 「おら、大人しく死にやがれ!」 しかしワムウは気にも咎めず歩き出す。 「あ?てめぇこのボウガンが目に入らねえのかァーーッ!」 モヒカンはワムウに向かって弓を発射する。 発射した、つもりだった。 「どうだァアアア、でっかい穴があいたぜえええッ!…な、なんでそんな平然としてるんだ… …なるほどうわははははははは は、これは俺の体でしたァぁぁぁいつのまにかァァァ!!」 発射しようとしたときには彼の腕はなかった。 発射したつもりになったときには彼の胴体は無かった。 話し終えたときには体も残っていなかった。 「参ったな、これでは出発できん」 ワルドが呟く。 「明らかに私たちを狙ってるわね、やっぱりあの物盗りも貴族派が一枚噛んでたのかしら」 ワルドはため息をつき、低い声で言う。 「諸君、すまないが、この目的地には僕とルイズさえ辿り着ければいい。君たちには…」 「囮」 続きをタバサが言う。 「そう、囮をお願いした。僕たちは裏口から出て、そのままアルビオンに出発する」 「ま、仕方ないわね。私たちは何をしにアルビオンに行くかすら知らないんだから」 決まりかけたころ、ワムウが声を出す。 「待て」 「なんだね、ワムウ君」 「その裏口から埠頭までほぼ一直線、敵の狙いは詳しくはわからないが、時間稼ぎならここより船や港を襲うなり 買収した方が確実だろう。つまり、敵の目的は時間稼ぎではなく俺たちの命ないしは身柄、所持品ということだ」 ワルドが眉をひそめる。 「なにがいいたい?急いでいるんだ、手短に頼むよ」 「ここを襲うと決めた以上、裏口にまで気を回さないということは無いだろう。それに、その裏口から埠頭までは 暗い倉庫街、暗殺にはもってこいだ。人間の目が4つでは到底足らんな。エシディシ様も言っていた、包囲した際には 一つだけ逃げ道を残し、そこを叩くとな。誰だってそうする、俺だってそうする」 「じゃあ、どうしろって言うんだね?」 苛ついたようにワルドが尋ねる。 「突破だ、俺が少々暴れればこの程度数分でケリがつく。暗殺されるのを防ぐには目が多いほうがいい。 戦力をここに集中させているなら、なおさらだ。戦力で勝っているのに決戦から逃げるのは間違いだろう」 「な…」 ワムウは有無を言わさず銃弾の雨と敵の森の中に突っ込んでいく。 銃弾が当たるものの、皮膚が弾き返し、射手をものの数秒で何人も食い尽くす。 「ひいいいッ!」 「あべしッ!」 「ヤッダバアアアアアッ!」 「もう一度…ぬくもりを…」 店内は阿鼻叫喚の様相を示す。 そして、二分後には、襲ってきた敵は一部しか残っていなかった。数ではなく、体積でだ。 たぶん数ヶ月は営業停止確実だろう。 「では、行くぞ」 行こうとしたワムウに、店主が感謝する。 「あ、ありがとうございます…この店は、祖父の代から受け継いでいて…」 ワムウは無視し、背中を見せ、店を出ようとする。 そのワムウに店主は礼をし、頭を下げる。 その瞬間、店主の頭が崩れ、ワムウを黄色い肉が襲った。 「この田吾作がァーーッ!多少心得があるらしいが、この『イエローテンパランス』に敵は無ァいいいッ!」 ワムウを黄色い肉が襲うと同時に、屋根が崩れ落ちる。 「落石注意報だよッ!」 岩石で穴だらけになった店をフーケのゴーレムが見下ろしていた。 To be continued.
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ミス・ロングビルの尊い犠牲によって破壊の杖は破壊され、土くれのフーケは撃退された 破壊の杖の奪還、土くれのフーケの討伐という任務には失敗したルイズ達だったが、 この結果で一応の体裁は取り繕うこと出来る為、まずは良しとされた 今日はトリスティンの王女アンリエッタ姫が隣国ゲルマニア訪問の帰りにこの学院に立ち寄った為、授業が全て中止された そのせいかどうかは知らないがルイズは暇を持て余しているらしく自室でデルフリンガーを相手に話をしている 「娘っ子、お前の使い魔いつでもどこでも真っ先に死ぬってホントかよ」 「ええ、そうよ、私が召喚すれば生き返るけどね」 「何で腰に差してるだけの剣にオレが使われるんだよ」 「他の剣が全部折れちゃったんだから仕方が無いじゃない」 「じゃ何か、おらぁ出番は無いけど巻き添えだけはきっちり喰らう立位置ってことか、おい」 「Exactry(その通りでございます)」 「それにしても綺麗に直ったわよね」 「おッ、そうだろそうだろ、あんなでっけえ爆発で吹っ飛ばされたってのによー 呼び出されてみたらキレーさっぱり直ってんだもんよ、ふっしぎだよなー」 (ディアボロと一緒に消えたものは直るってことなのかしら? そういえばこないだ割っちゃったお気に入りのティーカップまだ残ってたわよね、今度吹っ飛ばしてみようかしら) 扉がノックされる ルイズは気付いていない (もし成功したら美術品の修復とかも出来たりして) 扉がノックされる、今度は少しばかり強めに ルイズはまだ気付いていない (大きいものにも効く様なら橋とか城壁とか並みのメイジなら手も出せないものも出来たりして) 扉が叩かれる、はっきりと音を立てて ルイズはまだまだ気付いていない (生き物にも効いちゃったりしたりすると、あ、もしかしてわたしに治せないものはこの世に無いってこと) 扉が叩かれる音が弱まってきた、自信無さ気な申し訳程度の強さになっている ルイズはまだまだまだ気付いていない (とりあえず試してみましょう、上手くいったらもう誰もわたしの事をゼロだなんて呼べなくなるわ) ルイズは手を叩き自分の思いつきに感心した 扉が蹴られている、正に破れよと言わんばかりだ (わざとやってないかルイズ) 事此処に及んでやっとルイズは気が付いた様だ、ディアボロに扉を開ける様に促す ディアボロが扉に近づいた時、蝶番が壊れ扉が吹き飛んだ、同時に窓も割れた、 ついでに実の詰まったスイカを石の上に落とした様な鈍い音がした 真っ黒な頭巾を被った何者かは入ってくるなり頭巾を取りルイズの名を呼んだ 「ルイズ・フランソワーズ」 「ひ、姫殿下?!」 「聞いて欲しいお願いが有るのルイズ・フランソワーズ いいわよねだって私達お友達なんですものそうよねルイズ・フランソワーズ お友達の頼みを断るなんて意地悪な事はしないわよねルイズ・フランソワーズ 貴女がノックを無視する意地悪さんでも無い限りねルイズ・フランソワーズ」 王女の勢い(と微妙に青筋の立った顔)に押されたルイズは思わず頷いてしまった 王女の話では 今度結婚する事になったの私 相手は成り上がりの野蛮人、愛なんて欠片も無いわ でも同盟の為、国の為には仕方が無いの、ああ何て可哀想な私 アルビオンで勝利を収めつつある反乱軍がトリスティンを狙うことは分かりきっているんですもの そこで困ったことにある手紙がウェールズ王太子の元にあるの、あれが敵の手に渡ると同盟は御破算 トリスティン一国では勝てやしない、そうなると私は火炙り?縛り首?それともギロチンかしら? その手紙を戦火の真っ只中にあるアルビオンに行って取り戻して来て、お願い ということらしい 王女の話が一段落した時、 「王女殿下どうかその役目このギーシュ・ド・グラモンにも御命じ下さいます様」 入り口の影で話を聞いていたらしいギーシュが部屋に入ってきた と思うと顔を青ざめさせながら何かを指差している 指の先を追ってみるとなぜか床で寝ているディアボロが居た (ああ、そういえばこいつ決闘の後でディアボロを見るのは初めてだったわね) ギーシュが震える指を押さえてルイズの方を見て口を開く 「ルイズ、君はまさかとは思うが死体性愛の気が…」 ルイズの拳がギーシュの顔面にめり込む 「ルイズ、そうなのですか?はッ先程まで返事が無かったのももしかして」 「姫殿下ッ!そんな訳無いじゃないですか とにかく手紙の件はお任せ下さい、この命に代えましてもきっと取り戻して御覧に見せます」 アンリエッタ王女はルイズにトリスティン王家に伝わる水の指輪を手渡すと、 「これ以上の邪魔なんて野暮な事は致しませんわ、どうぞごゆっくりオホホ」な感じでそそくさと部屋を後にした 王女がが部屋を出て行った後、ギーシュを窓から外に叩き出したルイズは未だに寝転がったままのディアボロに近づいてみた 手をかざして息を確かめてみると… 「ああ、やっぱり死んでるわ」 ■今回のボスの死因 頭部打撲による脳挫傷で死亡
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ゼロと使い魔の書 第四話 朝焼けが琢馬の頬をぬらした。 静かな洗い場に着くと、洗濯を始めた。洗剤などの道具は何一つとしてないが、水洗いである程度汚れは落ちる。 しばらくの間、水の流れる音だけが響く。春といってもまだ水が冷たい。 下着が洗い終わったところで、不思議な鳴き声が聞こえてきた。 顔を上げると、校舎のほうで青緑色の竜が部屋を覗き込むような姿勢で上空を羽ばたいていた。 革表紙の本で調べるまでもない。あれも誰かの使い魔なのだろう。 そんなつもりではなかったが、つい習慣で唇の動きを読んでしまう。 「お・ね・え・さ・ま・だ・い・じょ・う・ぶ・な・の・ね……?」 もし、人語を話しているのだとすれば、そう言っているはずだった。言ってる内容には興味がなかったが、人の言葉を解するのだとすればもしかすると The Bookの記述が読めるかもしれない。機会を狙って試してみよう。 「あら、あなたは……」 振り返ると、昨日のメイド姿の少女が少し驚いたような顔で立っていた。干してある洗濯物を取りに来たのだろう。 「ああ、すまない。使わせてもらってる」 「いえいえ、構いませんよ。どうぞご自由にお使いください」 どことなく東洋人を思わせる顔立ちの少女は、軽く会釈すると干してある洗濯物を取り込み始めた。 「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」 少女は慣れた手つきで仕事をこなしながら、話しかけてきた。 「よく知ってるな」 「ええ、なんでも、召還の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ。それにしても……洗濯、お上手ですね」 予想していなかった言葉に、少し手を止める。 「別に大した事じゃない。こんなものは一人暮らしすれば嫌でも慣れる。この環境にも早く慣れたいものさ」 洗濯の手際をほめられるとは思っていなかった。これが当たり前だったからだ。 やはり、自分は孤独が板につく。友人のプレゼントを自分の復讐のために投げつけるような人間なのだ。 「あの、差し出がましいかもしれませんが、もし分からないことがあれば私に聞いてください。私、シエスタと申します」 提案の意図を測りかねた。社交辞令で申し出ているのではないのは顔を見れば分かった。 「ありがたいが、なぜ俺にそこまでしてくれる?俺は使用人どころかただの使い魔なんだぜ?」 「どちらも同じ平民ですから、困ったときはお互い様ですよ」 シエスタは微笑んだ。野に咲く花のような屈託のない笑顔である。 「普段は厨房にいますので。それではお先に失礼しますね」 「ああ」 面倒だったので残り半分以下になった洗濯物に視線を固定しながら答えた。それでも向こうは気を害することなく足早に遠ざかっていった。 少女の気配が完全に消え、仕事を片付けた後、先ほどの会話を思い出す。 「こっちは名乗っていなかった、か」 なぜそんなことが気になるのか分からなかったが、奇妙な罪悪感が沸いてきた。革表紙の本を取り出し、たった今抱いた感情を読み返してみる。 自分のことのはずなのに、なぜか説明のつかない、不思議で不可解な気分であった。 後で厨房に訪れる事にして、とりあえず部屋に戻り自分の主人を起こすことにした。 「ご主人、朝だ」 薄いネグリジェに包まれたピンクの髪の少女は、まるで赤ん坊のように無垢で安心しきった寝顔を浮かべていた。自分の睡眠を邪魔するものは何もないという感じの無防備すぎる姿態である。 「ご主人、朝だ」 耳元に口を近づけ声量も上げて再び言ったが、返事はなく呼吸音だけが返された。 部屋を見回すと立派な花瓶に一輪さしてあるのが目に入った。見た事のない派手な花だった。 それを手に取ると、ルイズの鼻の下に持っていった。 「んぅ……?」 花の芳香に気づいたルイズは覚醒した。視線が交差し、次いで手元の花に移る。 そしてどう反応していいのか分からないといった困惑した表情を浮かべると、無理に怒ったような顔をつくった。 「ふ……ふん!平民のあんたにしては気の利いた起こし方じゃない!」 「そうか、それはよかった」 少し顔を赤らめるルイズは、昨日の高慢な姿よりもずっと幼く見えた。 花瓶に戻しにいくと、ルイズはのたりのたりとネグリジェを脱いでいた。 「服、着させなさい。下着はそこのクローゼットの一番下、制服はそっちだから」 The Bookを呼び出す。 自分がまだ施設にいた頃、よく年下の子供の着替えを手伝っていた。 その時の経験を読み返し、もっとも効率のいい着せ方を考える。 「……あんた、随分手際がいいけど、弟とか妹とかいるの?」 一瞬手が止まった。脳裏に虹彩の薄い少女の顔が浮かぶ。 「……いないな。ただ昔は孤児院で生活していたから、こういうことは慣れている」 「そうなの」 それ以上ルイズは特に何もいわず、眠そうに目をこすってされるがままになっていた。 着替えが終わり、ルイズと部屋を出たところで丁度隣室の扉も開いた。 出てきたのはきつい緋色の髪をした女性であった。背も高くモデル体系で健康そうな褐色の肌だった。 その女性はルイズを見るとニヤリと笑って話しかけてきた。 「おはようルイズ」 ルイズは顔をしかめ、露骨に嫌な感情を示した。おそらくわざとだろう。 「おはようキュルケ」 「それがあなたの使い魔?ふーん本当に平民なんだ」 その表情には嘲りが含まれていた。 わざわざ名乗る必要もない。そう感じて軽く頭を下げるだけにしておいた。 「そ、そういうあんたの使い魔はなんなのよ!」 その発言は墓穴だと、ひそかに思った。案の定キュルケと呼ばれた女性はそれを狙っていたらしい。 「使い魔っていうのはこういうのを言うんじゃない?来なさい、フレイム。あたしも昨日、召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」 部屋の中から出てきたのは虎ほどもある巨大なトカゲだった。この距離でも体が熱気に包まれる。 「ほら見て!この鮮やかで大きい炎の尻尾! きっと火竜山脈のサラマンダーよ!好事家に見せたら値段つかないわよ?」 ルイズは悔しそうな表情を浮かべた。もう少し弱みを突けば泣き出してしまいそうな顔である。 主人のいさかいには興味ないのか、あらぬ方を眺めるサラマンダーを見ながら、余りよく考えずに心に思った事を口に出した。 「使い魔の実力は、値段ではかるのか?」 気温が上昇しているのにも関わらず、空気が凍ったような雰囲気に包まれた。どうやら地雷を踏んだらしい。 純粋な疑問を呟いただけだったのだが、二人とも鋭い指摘と受け取ってしまったみたいだ。 「そうよ!どうかしてるわ。いくら使い魔が立派でも主人たるメイジがそれじゃあねー。 何よりも大切なのは信頼じゃなくて?」 反撃するルイズ。はからずも役に立ったらしい。 「……さ、先に失礼するわ!」 下らない墓穴の掘りあいは、キュルケと呼ばれた女性が赤い髪をなびかせ立ち去ることによって幕を閉じた。 「少しは役に立つじゃない」 ルイズは自分を見上げながら言った。 「純粋に疑問に思っただけだ。もし本当なんだったら、平民の俺は最低ランクだろうからな」 ルイズは何か言いたそうにしていたが、結局中途半端に口を開け閉めしただけだった。 「と、とにかくついてきなさい」 歩き出すルイズの後につき従う。距離間は先ほどのキュルケとサラマンダーを参考にさせてもらった。 前ページ次ページゼロと使い魔の書
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その男は自分は死んだと思っていた。 確かにその男は死んでいた。 自分の大事な家族を庇い、その代償として生命を失った。 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求めうったえるわ!我が導きに、答えなさい!」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、 自らの使い魔を呼び出すためにサモン・サーヴァントを唱えた。 ドッグォバアァン!! そして起こる 大 爆 発 「ま~た爆発しやがったよ」 「流石はゼロのルイズだな…イテテ」 「おい大丈夫か?」 「ああ、ありがとう」 そんな中ルイズは…観ていた。自分が爆破した場所を。 そしてその本来なら起こらないはずの爆発の爆心地には……男が倒れていた。 それを見た周りのメイジたちは、 「何だ、あれは?」「人間か?」「あの格好は、どう見ても平民…」「ああ…平民だね、間違いなく」 等と動揺しながらもその男を見て、そして感想を言っている。 「あんた、誰?」 爆発騒ぎを起こしながらも周囲に謝ることなく倒れている男に話しかけるルイズ。 その声で男は目を覚ました。 男はあたりを見回してみる。 「ここは、何処なんだ?」 目の前にいた女(ルイズ)に質問する 「質問を質問でかえすなあーっ!!私が『あんた、誰?』と聞いているんだッ!」 その女の返答には奇妙な迫力があったが男はその程度でビビるような奴ではなかった。 「おれの名前は、虹村形兆だ」 だが答えた。 To Be Continued ↓↓
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時を同じくして場面は変わる。 「またミスヴァリエールのようですよ、オールドオスマン。ミス・シェヴルーズの『土』の授業中、錬金を失敗して爆発を起こしたようです。」 イルーゾォが即座に尻尾を巻いて逃げ出した爆発について、取り乱す事もなく冷静に報告する女性。 ミス・ロングビル、と名乗っている。 ルイズの級友(もっとも、お互いに意地を張って友人だと認めようとはしないが)の、褐色肌の少女キュルケ程ではないが 引き締まった身体は『出る所が出ていて』、知的な印象を与えるシンプルな眼鏡と相俟って随分に魅力的な女性だ。 彼女はこの学校で働く事になってから、まだ日が浅い。 それでも十分に慣れる程、『ゼロのルイズ』の『爆発』に関する噂は溢れていて、彼女の耳にも入ってきていた。 いや、それどころではない。 生徒同士噂をする場面にルイズが居合わせ、『サイレント』の魔法で黙らせようとして危うく爆殺しかけたのを目撃したことすらあった。 珍しい女生徒だ、と彼女は思う。 貴族であるのは当然、由緒正しい家柄の生まれでありながら、魔法の成功率は『ゼロ』、 どの魔法を唱えようと、起こる事象は全て『爆発』。 そんなケースは聞いた事が無い。本当にただの落ち零れなのだろうか―――― ――――ん?スタンド?それは何です? 「それから、ミス・ヴァリエールについてもう一つ。」 「ほう?」 「彼女の使い魔が逃げ出した、と報告があります。」 「逃げ出す?ミス・ヴァリエールは、コントラクト・サーヴァントも満足に出来んかったんかの?」 「いいえ、確かに成功したと聞いたのですが・・・・」 もっとも、何の魔力も持たない平民を召喚したのを成功と呼べるならば、だが。 しかしコントラクト・サーヴァントの方は確かに成功した筈だった。 変わったルーンだが、左手にそれを確認した。と、なんとか言うハゲた教師が言っていたのだ。 「契約した使い魔が主人から逃げ出すなど、有り得るのでしょうか。」 「普通なら有り得ん。有り得んが・・・・そうじゃ、彼女の使い魔は平民じゃったかの? 人間相手のコントラクト・サーヴァントについては、前例を知らんな。」 「彼女でなくとも御しきれない可能性があるわけですね?ですが」 問題は、『逃げ出した』だけでは無いのだ。 「見つからないと?」 「はい。彼女は捜索に役立つような魔法も使えませんから、見兼ねた教員が何人か捜索したのですが、『何処にも居ない』のです。」 「ふぅむ・・・・」 それはおかしな話だった。 気配を、姿を消す等の魔法など使えない平民が、比較的上位のメイジである教職員から隠れきる?そんなことが本当に可能だろうか。 オールドオスマンは手元の鏡を手に取った。装飾を施されたそれは、剣と魔法の世界にありがちな 任意の場所を映し出す遠見の鏡だ。 「ミスヴァリエールの使い魔、ミスヴァリエールの使い魔・・・・と。なんじゃ、普通に居るではないか!」 「え?」 その鏡には、教室から教室へと移動する生徒とは逆方向へ。辺りを見回しながら歩くイルーゾォがしっかり映って居た。 (イルーゾォ本人が知ったら驚くだろう。普通なら絶対に感知されないというのに。『この道具が鏡であるがゆえに』!映ってしまったのだ!) 「そんな、彼は・・・・!」 イルーゾォは、彼を捜索して居る筈の教職員や、ルイズ本人とまでもスルリとすれ違う。 「まあ見るからに、地味な青年じゃからのう。」 「そんな筈がありますかッ!」 鏡を囲んで見合わせる二人の背中に、ひかえめなノック音が届いた。 授業終り、教室前、廊下。 鏡の中のイルーゾォは、ドアからゾロゾロと流れ出る鞄の群れ(衣服はともかく、本や鞄を『自分の一部』と定義する人間はそういない。)から、 今朝ルイズの部屋にあったそれを見つける。 大人しく授業をうけていると言う事は、少なくとも今は自分を探しては居ないようだ。 パンナコッタ・フーゴの、躾のなってない下品なスタンド。『感染すれば最期』だなんて無茶苦茶な能力だったが、 当面の『敵』であるルイズの能力は『視界に入れば最期』・・・・無茶苦茶度合いがグンと上がっている。 前に『溶けた』ように、爆発して『消し飛ぶ』・・・・想像するだに恐ろしく、胃がきゅうとなった。 きゅう、ぎゅ、ぐうぅぅぅぅぅ・・・・・ (そう言えば、腹減ったなァ) ここへ来てから、何も食ってない。ついでに言えば水だって飲んでいない。 マン・イン・ザ・ミラーをちらりと見るが、そう言う事柄に対して何も出来ないスタンドである事は、自分が一番よく知っている。 心なしか、マン・イン・ザ・ミラーが申し訳無さそうな顔をしたように見えて (実際には帽子っぽいものと、眼鏡っぽいものと、嘴っぽいものは全然動かず表情なんてわからないのだが。) 咄嗟、「大丈夫だ。」と口をついて出た。 ルイズの鞄はふわふわと大食堂の扉に吸い込まれて行く。昼食の時間なのだ。 「大丈夫、耐えりゃあいいだけだ。オレは暗殺者なんだ。」 自分に言ったのか、マン・イン・ザ・ミラーに言ったのかは自分でもわからなかった・・・・もっとも、同じ事なのかも知れないが。 そして一方、ルイズ。 ついさっきまで、私は怒り狂っていた。あの使い魔の奴!平民の癖に!地味顔!空気!変な髪形! 召喚してみれば平民だし、中々起きないし、起きればバカにしたような事ばっかり喋って、終いには操り人形の糸が切れたみたいに動かなくなって。 放っておくのもなんだから部屋に連れ帰ってみたら、一方的に会話を切り上げてどこかへ消えてしまった。 信じらんない!使い魔って言うのは一度契約したら、主人に絶対服従のはずなのに。 先生方に「使い魔を探すのを手伝ってください」って頼む時、どれだけ恥ずかしかったと思う? きっと先生や、立ち聞きしていた生徒はみんな「『ゼロのルイズ』って奴は、使い魔すら扱えないのか?」って思ったわ。 中には隠しもせずに笑った奴だっていた。風邪っぴきの奴、いつか見てなさい・・・・! でも、今は怒ってない。アイツの顔を見たら怒りは帰ってくるかもしれないけど、少なくとも今はね。 なんでかっていうと、アイツ、イルーゾォ。昨日のお昼過ぎに呼び出したでしょう?それで、すぐ居なくなって、夕御飯は食べてない。 そして朝の私は腹を立ててたから、いかにも「これは罰よ!」って感じの粗末な朝食を用意させた。 食堂の場所は教えてなかったけど、幾らなんでもお腹が減ったら出てくるだろうって思ったもの。 でも、それでもアイツは出てこなかった。そして今も。 アイツは食べ物なんか持って居なかった。あんまりぼけーっとしてるから勝手に持ち物チェックをさせてもらったの。主人だし当然の権利でしょ? 見慣れない変な服とズボンのポケットには、小ぶりのナイフと手鏡がいくつか入っているだけ。 地味顔の癖にナルシストなのかしら?(ちょっと気持ち悪い)因みにそれらは、私が預かってる。 ナイフは危ないから部屋に置いて、鏡はポケットの中にある・・・・か、返すタイミングなんて無かったのよ! とにかく大事なのは、イルーゾォは今絶対にお腹を空かせてるって事。学校の何処でも「食べ物がなくなった!」なんて騒ぎは起こってないし。 それでも・・・・それでもアイツは姿を見せない。一度も。 ――――帰ってきたら身の回りの世話をしてもらうから! ――――嫌だね 心配と自信喪失で、最高に美味しいはずの昼食は砂の味がした。 確かに一日御飯を食べないくらいじゃ死にゃあしないわ。でも、食べられるんなら食べたっていいじゃない。 そんなに、そんなに嫌なのかな。私が・・・・『ゼロのルイズだから?』 「ねえ、タバサ?ちょっと頼みがあるの。一緒に・・・・キュルケは別で。一緒に来てくれる?」
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「ハァ………」 自分の部屋で、静かにため息をつくキュルケ。 彼女は今悩んでいた。 それというのも、 「平民ならまだしも、人間じゃないなんてねぇ…」 彼女の新しい恋の相手…の予定だった、ゼロのルイズの使い魔が、実は人間では なかったのである。 「それにしても…凄かったわね、あれ」 ドットとはいえ、ギーシュの作り出したゴーレムを、苦も無く一蹴する様を思い出す。 ゴーレムを溶かし、イカズチを発し、傷を治し、さらには姿まで変えるその力… 「先住魔法?でもディティクトマジックでの反応は無かったし…」 ルイズが彼を呼び出したとき、念のため魔力の反応を調べていたのだ。 彼女の家と、ルイズの家は犬猿の仲であり、彼女自身何かとルイズにちょっかいを 出している身としては、使い魔の質で負けるわけにはいかないのである。 「東方の亜人とか言ってたけど」 決闘の後、2人を連れて行ったミス・ロングビルに、何人かの生徒が彼は何者かと 尋ね、返ってきた答えがそれであった。 もっとも、その答えを聞く前に様々な噂が飛び交い、もはやその言葉を素直に信じる 生徒はあまりおらず。さらに、キュルケ以外にも、彼に魔力の反応が無い事に気付き、 それを騒ぎ立てる者までいて、更なる噂が生まれることになった。 曰く、ラ・ヴァリエール家が作り出した最終兵器 曰く、エルフが人類抹殺の為に生み出した魔人 曰く、星の海を越えて、この世界を侵略しに来た宇宙生物 曰く、地獄から蘇った悪魔 等々 どれもこれも邪悪っぽいのは、決闘相手のギーシュが死にそうな目にあったから。 だけでなく、見た目も無関係ではないだろう。 「ま、何であれ尋常じゃないわよね。 はぁ、ルイズの悔しがる顔が見れないのは残念だけど、諦めるしかないか… にしても、あの時ルイズが来なかったらどうなってたのかしら?」 彼を誘惑しようと、自分の使い魔を迎えに行かせた事を思い出す。 なぜか彼の変わりにルイズが来て、その後喧嘩になってうやむやになったが、 もしあの時彼が来ていたらどうなったのだろう? 「ふふふ、いらっしゃい」 育郎は素直に従い、キュルケがその身を預けるベッドに腰かける。 「あなたは、アタシをはしたない女と思うでしょうね」 大きくため息をついて、悩ましげに首を振るキュルケに、育郎は口を開く。 「いいや」 その言葉を受け、嬉しそうに育郎に身を摺り寄せるキュルケ。 「解ってくれるの!そう、しかたないわよね!恋は突然なんですもの。 突然で、そして一気に燃え上がるの… だめ…やっぱりアタシってば、みっともない女だわ」 「そんなことは無いよ」 そう言って、育郎はキュルケのアゴに手を沿える。 「ああ…」 目をつぶり、唇が重なる感触を待ち受けるキュルケの耳に、育郎の声が入ってくる。 「君は…愚かな女だよ!」 「え!?」 驚いて目を開けると、異形の姿に変わっていく育郎の姿が目に入った。 「え、ちょっと何よこれ?やぁ…ッ!」 異形から次々に触手が生え、キュルケの肢体に絡み付いていく。 「だ、だれかたすけングッ!」 触手がキュルケの口の中に入りこみ、助けを呼ぶ声を封じ込める。 「怖がる事は無いよ。君が望む事をしてあげるだけさ…」 その言葉と共に触手たちが一斉に… じゅるり 「お、惜しいことを…じゃなくて、危なかったわ! 一歩間違えてたら、そんな素晴らしい…もとい、恐ろしい事に! 待って、じゃいつも同じ部屋で寝てるルイズは!?」 あれほどの力を持つ存在が、本当に『ゼロのルイズ』の使い魔なのか? 夕食時、食堂に使い魔を連れてやってきたルイズは、彼に自分の食事を分け与えていた。 さらにその後、厨房に明日からは自分と同じものを、と頼んでいる姿も目撃されている。 正体がばれたので、わざわざ平民扱いさせておく必要が無くなった。 つまり本当の主人は… 噂の中にはその類のものも含まれていた。 「そ、それじゃまさかあの子はもう!」 「ご、ご主人様…」 下着姿で立つルイズが、ベッドに腰掛ける育郎を震えながら見る。 「ルイズ…僕は君に、一日に君が『ご主人様』と主張するのを何回許したかな?」 「は、はい…5回です…」 やれやれと首を振って、育郎がルイズに近づく。 「今はまだ君が主人であると思わせたほうが都合が良い… けど、だからと言って気楽にそう言われるのは不快だからね。 それで…君は今日何回自分のことを『ご主人様』と言った?」 「9回…です」 「7回だ…」 冷ややかに告げ、育郎はルイズの顔に手を伸ばし、その柔らかな唇に指を添える。 「いけない子だ…そんなに『おしおき』が欲しいのかい?」 「あぁ…」 震えているのは恐れているからではない、期待しているのだ。 「まったく、これじゃあ『おしおき』にならないな…今日は止めにしよう」 「そ、そんな!」 育郎の足しがみつき、必死になって懇願するルイズ。 「お、お願いしますご主人様!こ、この哀れな犬にどうかお慈悲を!」 「しょうがないな…」 「ありがとうございます…ぁ!」 触手が現れ、ルイズの幼い身体に… じゅるり 「そ、そんな!?ルイズがそんなうらやましい事…もとい酷い事をされていたなんて!」 自分の妄想に、身体をわななかせるキュルケ。 「こうなったら…私が何とかしないと!」 そう叫んで自分の部屋を飛び出し、隣のルイズの部屋の扉の前に立つ。 「こんな事に、他人を巻き込むわけにはいかないわよね…わ、私一人じゃひょっとして 不覚を取るかもしれないけど、それはしょうがないわよね? そ、その結果色々と蹂躙されちゃったりしちゃったりしても、仕方ないわよね? わ、私も精一杯やったんだけど、卑劣な罠にかかっちゃったりするんだから、 ホントにもう…不可抗力って奴よね!?」 じゅるり 「ハァハァ…そ、それじゃあ行くわよ!」 喜色満面で扉を開けるキュルケであった。 「ああああああぁ…………ぁああああああ」 「この位置までは大丈夫と」 育郎がデルフの鞘に印をつける。 「いやーすまねぇな。相棒」 「ねえ、さっきから何やってるの?」 不思議そうな顔をして、育郎の手元を覗き込むルイズ。 「いや、デルフがなるべく自分を持ち歩いてくれって言うから」 「今日みたいな事があったとき、俺が居た方がいいだろ?」 「それとさっきのに、何が関係あるのよ…」 鞘を指差し、育郎がルイズの疑問に答える。 「いや、危ないから鞘に入れておかなきゃいけないけど、それじゃデルフが 喋れないから、何処まで鞘に入れたら喋れなくなるかを調べてたんだ。 ここから切り取って、ちょっと手を加えて落ちないように」 「いいじゃない、別に。メーンとか言わなくなるし」 「娘っ子も結構拘るな…というか俺一回しか『メーン』って言ってねえぞ」 「2回目ね、3度目は無いから覚悟しときなさい。 って、道具も無いのにどうやってそんな工作するのよ?」 リスキニハーデン・セイバーとメルテッディン・パルムを組み合わせた まったく新しい工作術で 「まあ、いいけど…ってキュルケ!なに人の部屋に勝手に入って来てるのよ!?」 「キュルケさん?」 二人が扉を開けたままの姿で立つつくすキュルケを見る。 「あ………」 「「あ?」」 「貴方達にはガッカリよ!!!」 「きゅるきゅる!(駄目だこりゃ!)」 部屋に残されたフレイムが、そう呟いたとかなんとか。
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前ページ/ゼロの使い/次ページ その日の夜、メディルは主人の部屋で、ルイズから大目玉を食らった。あの決闘騒ぎの後、強制的に部屋に連行されたのだ。 「いい!?あんたの魔法はどれ一つとっても桁外れなんだから、矢鱈と他人に撃つんじゃないわよ!?」 「御意。」 そんな人物に決闘を任せたのは誰だと、彼は反論しなかった。 不本意とはいえ、彼女は今の自分の主。逆らうことは出来ない。 その時―メディルは微かな空気の震えを感じ取った。 「何か聞こえなかったか?」 「はぁ?何も聞こえないわよ。気のせいじゃないの?」 「そうか?中庭の方から巨人が壁を殴るような音が聞こえたのだが・・・」 「・・・もしかして・・・」ルイズが何かを思い出し、ベッドから立ち上がり、机の上に置いた杖を持って、使い魔を連れて部屋を出て行った。 中庭では、30メイルはあろうかと言うゴーレムが主を肩に乗せ、学院の壁にパンチを連続で繰り出していた。 このゴーレムの主は今トリステインを騒がせている貴族専門の盗賊・土くれのフーケである。 「全くとんでもない壁だねぇ。」 今破壊しようとしている壁は『禁忌の箱』と呼ばれるものに入った『秘術の書』と呼ばれる秘宝が眠る宝物庫の壁だった。 普段なら扉や壁を土くれに変えて、獲物をいただくフーケだが、流石に学院の宝物庫には通用せず、止む無くゴーレムによる破壊と言うフーケらしからぬ野蛮な手段をとったのだ。 しかし、何度殴りつけても壁は崩れるどころか、ヒビ一つ入らない。フーケは焦っていた。 「早くしないと・・・教師共ならまだしも、あのとんでもない使い魔に襲われたら一巻の終わりだ。」 無論、それはメディルの事である。あれは化け物だ。と彼女の経験が言っている。 そして、それは正しい考えであった。化け物という意味で。 その時、ゴーレムの右肩が爆発し、腕が轟音と共に地面に落ちた。 振り向くと、最も会いたくなかった者を引き連れた、桃色の髪の少女がいた。 「土くれ!大人しく縛につきなさい!」 しかし、この盗族が大人しくお縄になるはずも無く。 「チイッ!こうなりゃヤケだ!」 フーケはすぐさま錬金で落とされた右腕を修復し、そのままゴーレムの両腕をルイズ達に振り下ろす。 メディルは余裕で回避したが、ルイズは辛うじて避けたと言う程度だった。 その様子がフーケには不可解だった。 (おかしい・・・魔法で迎撃してこないなんて・・・) てっきり、あっさりと返り討ちにされると思っていただけに、この光景は意外だった。 が、すぐにチャンスだとばかりに攻撃態勢に入る。巨体ゆえ、動作は緩慢だったが。 「何で魔法を使わないのよ!」 ルイズが強力なメイジであるにも拘らず、目の前の敵に魔法を使わなかった使い魔に喚く。 「他人に魔法を撃つなと言うからそれに従っている。」メディルは事務的に返した。 「くっ・・・もういいわよ!!」 メディルは役に立たぬと判断したルイズが、再び杖をゴーレムに向ける。 ルイズは失敗魔法をぶつけ続けるが、いくら壊してもたちどころに修復してしまう。 ならば、フーケ自身をと思うが、狙いがうまく定まらず、ゴーレムに無意味な傷を付けるに終わった。 そして敵は動きは遅いが、拳や腕の攻撃範囲は広く、ルイズは繰り出される度、紙一重でかわしていた。 やがて、杖を持つ手も震え、足にも限界が来た。 「自慢の使い魔も、戦わなけりゃどうって事はないわね。」 フーケの嘲笑を合図に、再び両腕を振り下ろそうとするゴーレム。 ルイズは逃げようとしたが、足がもつれて転んでしまった。 殺られる・・・!!死を覚悟し、目を瞑った。 「イオナズン!!」 世界の果てまで届く様な爆音が響いた。 ルイズが恐る恐る目を開けると、ゴーレムは文字通り粉々に吹き飛んでいた。フーケが壊そうとしていた壁ごと。 呪文の主が淡々と告げた。 「私が受けた指令は『主人を守る』そして『他人を撃つな』。だから『人間』は撃たずに主を守った。何か問題は?」 ルイズは首を大きく横に振った。 空中のフーケが舌打ちしながら、つぶやいた。 「くっ・・・悔しいが、あいつは敵う相手じゃない、ここは引き上げ・・・」 「メディル!そいつは例外!!撃ちまくって!!」 「御意。だが撃ちまくる必要はない。」 メディルは空中のフーケに狙いをつけて、普段よりいっそう不気味な口調でつぶやいた。彼の世界で恐れられた恐怖の言葉を。 「ザキ。」 その瞬間、フーケの耳に訳の分からない言葉が響き、その言葉を聞いた瞬間、フーケの心臓が止まった。 何が起こったのかわからぬまま、彼女の体は地に、魂は地獄に落ちた。 その様子を見たルイズは喜びのあまり思わずメディルに抱きついたが、本人はノーリアクションであった。 「やったわね!でもあれはどういう呪文なの?」 「即死の魔法だ。より高位のものなら複数の生物の命を奪うことも可能だ。」 「・・・つくづくとんでもないメイジねあなたは。」 「それより、怪盗の顔を拝んだらどうだ。恐らくこの学院内部の人間の筈だ。」 そんな馬鹿なと疑いながらも、言われるまま死体のフードを剥ぐと、そこにはルイズの見知った、学院長秘書のロングビルの顔があった。 「フーケの正体が・・・彼女だったなんて・・・あれ?」 ルイズは辺りを見回したが、メディルの姿は無かった。 あるのは盗賊の死体と戦いで壊れた壁と、夜空に浮かぶ2つの月だけであった。 メディルは先程崩壊した壁から宝物庫に侵入していた。実はコルベールの研究所を訪れる前に、宝物庫(扉を開ける事は出来たが、無用なトラブルを避けるため入らなかった)に来ていたのだ。 彼にとって、馴染み深い気を内部から感じたが故に。ちなみに、フーケは彼の後に宝物庫に来ていた。 「起きろ、パンドラ。私だ。」 彼に命じられたそれは勢いよく口を開けた。 それは緑色の宝箱・・・に見えた魔物だったのだ。それもある意味魔王よりも恐ろしいと謳われた程の。 鋸歯の並んだ口の中には一本の巻物が入っていた。メディルにとって見間違える筈の無い巻物だ。 メディルが知る由も無いが、これがフーケの狙った『禁忌の箱』と『秘術の書』の正体だった。 「どうやらここの責任者に掛け合う必要がありそうだな。」と言い残し、彼は自分を呼ぶ主の元へ帰った。 翌日、フーケの一件で二人は学院長に呼び出されることになった。何故かコルベールも同席している。 「よくやってくれた。ミス・ヴァリエールにはシュヴァリエの称号が間もなく授与されるであろう。」 「光栄にございます。」と会釈するルイズ。辛うじて平静さを保っているものの、今の彼女は幸福の絶頂にいた。 「それにしてもミス・ロングビルがのう・・・盗人とはいえ、生け捕りにすることは出来んかったのかのう?」 「学院長殿、此度の立役者に対して、そのような物言いはどうかと。どの道極刑は免れなかったでしょうし。」 「コルベール、君も彼女には御執心じゃなかったのかね?」 「え・・・ええ。確かに。」と言いながら頬を染めるコルベール。 「そろそろこちらの用件も言わせてもらいたいのだが。」 「コラ!学院長に対してなんて口を・・・」ルイズが怒鳴る。 「学院長殿、宝物庫に眠っている箱と巻物。あれは私がかつて持っていたものに相違ありません。お返しいただきたい。」 「ほう・・・あの恐るべき生き物と巻物は君の世界のものじゃったか。」 「一体どういうことですか、学院長。」 「ふむ・・・あれは30年前・・・森を散策していたワシは3頭のワイバーンに襲われた。 じゃが、奴らの足が偶然、落ちていたあれにあたり、怒ったあれは『ザラキ』とか言う呪文で2頭を仕留め、 最後の一頭の頭を噛み砕いたのじゃ。あれの口の中に巻物が見えたのはほんの一瞬じゃった。」 「メディル・・・ひょっとしてあんたの使った呪文の・・・」 「うむ。強化版だ。しかし、私はその上を使うことが出来る。やってみるか?」 「遠慮しとく。」と青い顔で否定するルイズ。 「まあ、君の世界のものだとは君を見たときからうすうす感じていた。今日、君がそう申し出ることも予測していた。」 オスマンが目線を送ると、コルベールがあの禁忌の箱を取り出し、受け取ったメディルが中身の確認を行う。 「さて、ここからはミス・ヴァリエールには席を外してもらう。」 「え・・・あ、はい!」 相手が相手とあってか、ルイズは素早く退室した。 「さて・・・メディル君・・・君のそのルーンだが・・・」 「さしずめ、知識を与えるルーン・・・と言ったところでしょうか?」 その言葉に、オスマンもコルベールも腰を抜かした。 「な・・・何故その事を・・・」 当然の驚きだった。異世界の存在であるメディルが知り得る筈の無い、ルーンの効能を言い当てたのだから。 そのルーンに関する情報はこの学院内では生徒の閲覧を禁じている、魔法の罠が多数張り巡らされたフェニアのライブラリーにしか無く、 いかにメディルといえど、侵入すれば何らかの痕跡くらいは残す筈だったからだ。無論、そんな物は無かった。 少なくとも、フーケ襲撃と同じ頃、コルベールがルーンを調べに行った時には。 「何故・・・?それはそうだろう。・・・この巻物の文字が・・・読めるのだから!!」 「しかし、それは君の世界の文字で・・・」「この巻物は・・・」 コルベールの言葉を遮り、メディルがいつもとは違った声と口調で答え始めた。 「この巻物は私を含めた多くの魔術師が解読に挑み、挫折した古代魔法の書!! この私の英知と魔力・・・そして莫大な時間をもってしても只の一文字も解読できなかったものが、 今はすらすらと読める。考えられることは只一つ、この世界で身に付けたこのルーン。」 「な・・・なるほど・・・」と納得するコルベール。 「それはミョズニルトンという伝説の使い魔のもので、あらゆるマジックアイテムを使いこなす頭脳をもたらすと言うのじゃ。」 「そうか。クククク・・・ハハハハハッ!!」 普段は冷静沈着なメディルが異様なまでに興奮していた。 この巻物は魔王軍在籍時代、彼が暇を見つけては研究していたものだった。 無論、解読によって得た結果を魔王軍の利益にするつもりではいたし、魔王自身の許可も得ていた。 しかし、彼は魔王の配下である前に、一人の魔術師だった。 解読を始めた動機は、軍務よりも私的な好奇心だった。 前ページ/ゼロの使い/次ページ
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1-181 1-696 1-796異世界協奏曲 1-90小ネタ… 2-131ルイズ×サイト 3-152魔法戦隊メイガスファイブ 3-33時を駆ける少女 4-115 4-126 4-146 4-229ゼロの三国志 4-501 4-755『シエスタ&才人の小旅行』プロット(*1)5-400サイトがんばる! 5-540 6-75マリコルヌの野望 6-135今宵は無礼講 6-218マリコルヌの野望 炎の師弟愛編 6-327タバサネタバレもの 6-552『魔法戦隊メイガスファイブ』ダイジェスト 6-630ルイズのハロウィン 8-303アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 8-343アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 8-425アメジョ風に便乗 8-618バカップルイズ〜そして彼女はやさぐれる〜 予告編 9-286惚れ薬編if 9-326ダメ、絶対。 9-549アニエスの囚われ人 9-560ビダーシャルの趣味 9-600シルフィもサイトと遊びたい! 10-117ルイズの秘密 11-122 10-340その後 11-192ルイズの変装 11-386ある日の出来事 11-429つうこんのいちげき 11-494サイトとバレンタイン 12-88ある吟遊詩人の手記 12-117知的好奇心 12-153女王アンリエッタの優雅な一日 12-365青銅と香水と聖女の日 12-508 13-82マリコルヌの休日 13-202俺のパンツを履いてくれ 14-344フラグクラッシャーズ? 14-478一筆啓上 14-676 14-725黄金の日々 15-683竜の血 15-756タイムトラボー 17-498ジェシカとでぇと A2-338『ゼロの使い魔』 第2期 序章 X01-02『トリステイン戦隊ゼロファイブ!』(*2)
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ゴーレムの肩に乗ったフーケは少しばかり焦り始めていた。 宝物庫の壁が壊れない。確かに硬いと思っていたがここまでとは。 細かなヒビが入っているようだが、一向に崩れる気配が無い。 やはり強攻策に出るのはまずかったかもしれない。もうそろそろ音に気づいた教師や生徒が現れるころだろう。 だが、ここで退いては『破壊の杖』を諦めることになってしまう。 (『破壊の杖』を盗む、自分の命も守る。両方やらなくちゃならないのが「盗賊」のつらいとこね) フーケが覚悟を決め、もう一発殴ろうとゴーレムを動かしかけた時、辺りが急に暗くなる。 上を見上げるとウィンドドラゴンが飛んでいるではないか。 (早いじゃないか!) 予想よりもずっと早い敵の出現。しかもドラゴンときたもんだ。どうもこの学院とは相性が悪いらしい。 「サバス!捕まえなさい!」 姿は見えないが、ウィンドドラゴンの背中に誰か乗っているのだろう。 その誰かが「サバス」に自分を捕まえるよう指令を送っている。 とっさに思いついたのは、このウィンドドラゴンが「サバス」だということ。 急降下してそのまま自分を捕らえる気か?身構えたそのとき、横から声が聞こえる。 「お前には選ぶべき道がある!」 ありえないことだった。ゴーレムの肩に自分以外で乗っている奴がいる。 声のした方を向く。 そこにいるのは、昼間に会ったばかりの謎の「変態」! 百戦錬磨のフーケの体が固まる。 変態が口を開けると、その中から一振りの剣が出てきた。その切っ先は真っ直ぐフーケに向かっている。 「いまさらだけどおでれーた。俺をこんな風に使う『使い手』は初めてだわ」 さっきとは違う軽い口調が変態から聞こえた。 攻撃するか、逃げるか。一瞬の迷いがフーケに生まれる。 それが命取りだった。 「つかんだ」 変態がいつの間にか目の前にいる。その両手はフーケの肩を力強く押さえ込んでいた。 この時点でやっと「逃げる」という選択肢を選んだのだが、時すでに遅し。 体がピクリとも動かない。 ジリジリと仮面のような顔が近づき、口が開かれる。 「そうだ相棒!スピードは出さず!ただしッ!『万力』のような力を込めてッ!」 口の中から剣がフーケに向かって伸びてくる。 剣が自分の顔にゆっくりと刺さっていくイメージが浮かぶ。それを振り払うように、フーケは腹の底から叫んだ。 「うわああああああああああああ!!ワーーナビーーーーーーーー!!」 叫びに応えるように、ゴーレムが暴れ始める。 「ふんばれ相ぼォォォォォォ!?」 「!!」 フーケが体を捻る(といってもほとんど動かなかったが……)。 変態の口から飛び出た剣が頬をかすめて飛んでいく。剣はそのまま地上へ落下していった。 「扱い酷くねェェェーーッ?」とか聞こえた気がするが…………気のせいだろう。 問題はこの目の前の変態だ。これだけゴーレムが暴れてるのに、少しも慌てる様子がない。と。 「フガッ!」 間抜けな悲鳴を上げながら変態は突如フーケの目の前で「爆発した」。 フーケは急に体が軽くなるのを感じ、素早く後ろへ飛び間合いを作る。 「ちょっと!ルイズ!自分の使い魔を攻撃してどうするのよ!」 「ちちょっと間違えただけよ!もう一発いくわ!」 さっきよりも派手な爆音が響く。フーケが音のした方を見ると、さっきまでゴーレムで殴っていた壁から煙が上がっている。 フーケは今度は一切の迷いなく、そこへ飛び込んだ。 そこからの行動はまさに一流の盗賊といえる素早さで、目的の『破壊の杖』を見つけ出し、犯行声明を壁に刻む。 外を見るとゴーレムが炎に包まれている。 どうやらウィンドドラゴンに乗ったメイジたちは、フーケが宝物庫にすでに侵入していることに気づいていないらしい。 フーケがニヤリと笑うと、ゴーレムが歩き出す。それを追いかけてウィンドドラゴンが宝物庫から離れていく。 いろいろ予想外の展開はあったが、最終的に勝てばよかろうなのだァァァァァッ!! フーケはちょっとハイになりながら、宝物庫から飛び降りた。 ルイズたちはシルフィードに乗ったまま巨大ゴーレムの後をつけた。 その間にずっとキュルケの炎、タバサの氷柱、ルイズの爆発がゴーレムを攻撃する。 しかしそれら全てを受けてもなお、ゴーレムの進行は止まらない……。 と、急にゴーレムの足が止まる。 そしてそのまま崩れていき、後には大きな土の山だけが残った。 「…………フーケは?」 「いないわね…………」 「逃げられた」 呆然とする少女達を二つの月が見下ろしていた。 学院からちょうど馬で4時間。 フーケはあらかじめ見つけておいた小屋が見えてくると、やっと一息付いた。 追っ手が来ている気配は無い。 小屋の前に馬を繋ぐと、さっそく盗み出した『破壊の杖』を手に持ってみる。 杖というには変わった形状と、見たこともない金属。 とりあえず杖を両手でしっかり握ると、愛用の杖にするように振ってみる。 …………何も起きない。 もう一度振ってみるが、うんともすんとも言わない。 大爆発が起きるのではないかという不安と期待があったのだが、肩をすくめる。 次に関連のありそうな魔法をいくつか唱える。 唱えるたびにドキドキするが、どれも反応は無い。 フーーと深い溜息をすると『破壊の杖』を地面に置く。さすがは秘宝といわれるアイテム。そう簡単に動かないらしい。 だが、そう簡単に諦める訳にはいかない。 …そう言えば、こういうのに詳しそうなハゲが、困った時は叩いてみるのが秘訣とか言っていたのを思い出す。 試しにショックを与えるために叩いてみる。動かない。今度は踏みつけてみる。動かない。グリグリしてみる。動かない。 なじってみる。動かない。なじりながらグリグリ踏みつけてみる。動かないが、少しイイ気分になった。 だが結局『破壊の杖』に変化は見られなかった。 しかたなくフーケは『破壊の杖』を持って、小屋の中に入っていった。 さて、これからどうするか。使い方が分からないことには先に進まない。 これらのマジックアイテムに詳しい人間は誰だろうと考えて、真っ先に浮かんだのはトリステイン魔法学院のメイジたちだった。 もう一度現場に戻るのは危険だが、まだ誰もミス・ロングビルと『土くれ』のフーケを同一人物と知る者はいないだろう。 そこで何食わぬ顔で学院に戻り、フーケを見つけたと言ってこの小屋のことを教える。 オールド・オスマンの性格からして、王室には頼ることはまず無いと考えられる。すると学院内から捜索隊が組まれるはずだ。 口ばかりの教師陣からして、それ程多くは選ばれまい。2~3人程度だろう。 それぐらいの数なら、あのレベルのメイジが束になってもどうにかできる自信が、フーケにはあった。 トライアングルだなんだ言っても、実戦経験が彼らには無さすぎるのだ。 肝心のところで尻込みしてしまう。……さっきの自分自身のように。 (結局、あいつらはなんだったんだろうね) あの不気味な姿を思い出して、すこしブルーな気分になる。 あのとき、謎の爆発が無ければ自分はどうなっていたことか。 先刻の戦いで何もできなかったことは、それなりにフーケのプライドを傷つけていた。 『破壊の杖』をしまう為に、チェストを開けながら回想を続ける。 冷静になって考えれば、あれはウィンドドラゴンの上に乗っていた誰かの使い魔なのだろう。 あの謎の爆発の魔法もそうなのだろうが……あんな魔法を使えるのは一体誰だ? 深く考えながらも『破壊の杖』をチェストに置く。そして、しまおうとしたその時…… カタ! (追っ手か!) 音がしたほうに杖を向ける。 が、風によって窓が揺らされただけだと分かり、ホッと杖を下ろす。 今回の仕事は危険で奇妙な事が重なり、少し神経質になりすぎているのかもしれない。 (今夜は月が明るいねぇ) 窓から外を眺めるフーケを双月が優しく照らした。 ふと、フーケはある少女の事を思い出す。今頃元気にやっているだろうか。 月の中に彼女の笑顔が浮かぶ。 だが、雲によって月が隠れたことでその幻影も消えた。 ……少し感傷的になっている自分に思わず苦笑する。 冷静にならなくては。本当の勝負は明日だ。今は疲れを少しでも取らなくてはならない。 とりあえず今は「追跡者」は存在しないんだから………… しかし、それは大きな勘違いだった。 主の命令を聞き、愚直なまでに行動し続ける者がいた。 それは巨大なゴーレムに目もくれず、ただ盗賊の後を追い続けていた。 森の木々の影の中を、音も立てずに這いずり回る。 ブラック・サバスは小屋のすぐ側まで来ていた。目的はあの中にいる。 だが入るためには影が足りない。だから待つ。機会が来るまでひたすら待つ。 そのとき風が吹いた。小屋の窓がカタカタと鳴る。 一瞬、本当に一瞬月が雲に隠れる。 それだけで十分だった。ブラック・サバスはすでに小屋の側から、小屋の中へと侵入していた。 フーケの叫びが夜の森にこだまする。 深夜の第2ラウンドが始まった。
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